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Ninth

日々観た映画についての記録と備忘録
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【女は荒野で銃を持ち、コルセットを脱いだ】トーマス・アルスラン Thomas Arslan:黄金/GOLD

黄金/GOLD 

 

2013年ドイツ

監督トーマス・アルスラン/Thomas Arslan

撮影:パトリック・オールス

編集:ベッティーナ・ボーラー  

音楽:ディラン・カールソン
出演:ニーナ・ホス/マルコ・マンディク/ラルス・ルドルフ/ラルス・ルドルフ

第63回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門ワールドプレミア上映

 

とても地味な西部劇ですが、この地味さ、淡々とした部分こそが削げ落した爽快さであり

素晴らしい映画だと思いました。

映画なのにまるでドラマティックさはなく、人は地味に死に、淡々と物語りは進行していきます。

だけど彼らのもう前に進むしかない、道なき道を歩む姿を見せられ、眺めることに「何か」を感じます。

ドラマはあるが、ドラマを放棄し拒絶する部分に誠実さを感じました。

 

体裁としては「西部劇」なのかもしれません。

舞台はゴールドラッシュから少し経過した(つまりあらかた黄金は奪われてしまった)

1898年代のカナダ。

有り金をはたいた貧しいドイツ人移民たちが黄金獲得の為に集まる。

メイン・主人公として描かれる人物は女性 エミリー(ニーナ・ホス)です。

すでに若くもないけれど、美しい女一人が男だらけの集団の中で寡黙に黄金があるであろう道を

馬に揺られて歩みます。

 

 

複数の見知らぬ人間たち、一攫千金で金鉱を狙う人間たちと何かドラマティックでアクションが生まれそうですが、

一般的に観客が望むようなドラマはほぼ生まれません。

しかしその馬たちが連なり進む姿、馬上で揺れる人間たちを捉える遠景ショットには不思議なリズムがあり、

物語りの過剰さを排除した誠実さと言うものを感じます。

ただ淡々とカメラは馬に揺られるこの集団を遠くから捉え、映していくだけです。

主人公であるエミリー(ニーナ・ホス)もその他の人物たちも表情がよく見えない位に遠くから撮られるので、

自然と人間の微細な表情よりも、彼らを取り巻く厳しい山々や森、周辺へ目がいきます。

 

 

監督はトルコ系移民とドイツ人のハーフとのことです。※1

安直かもしれませんが、「異端」と言うものを監督自身が身をもって意識してきたのではないかと想像します。

 

「黄金」はアメリカに移民してきた貧しいドイツ人の移民たちがメインです。

そしてさらに主人公であるエミリー(ニーナ・ホス)は女性がコルセットを締めて制限されていた時代に、

女一人で黄金獲得に全財産を叩いて参加してきた部分で更に異端であるし、劇中でも異端視されます。

もちろん淡々としたこの映画の中で、その異端視もサラリと流され、そこにベタベタとした感情は入れ込ませません。

 

劇中に度々背景のように現れる原住民たちもいわくありげに見えますが、それもわたしたちが

「いわくありげ」とフィルターで越しに見ているだけかもしれないし、

そして彼らも歴史の中では原住民でありながら「異端」な存在とされてしまいます。

 

 

淡々と物語りが進行する書きましたが、過酷な旅なので驚くような出来事もあります。

恐ろしく自分の身に降り掛かったらもう残酷すぎる出来事も簡単に起こります。

でもそれを「ドラマ」として描かない。

本当に淡々とああ、人間は簡単に死ぬんだな、と思ってしまうし、

実際人間が死ぬのも生きているのもそうなんだろうと思わせます。

 

そんな地図にも載ってない厳しい山々の中で孤独と恐怖を目の前にして、

エミリー(ニーナ・ホス)は凛とした姿勢で対処していきます。

それだけで語られはしない彼女の過去が透けて見えますし、その佇まいに尊厳があります。

風で揺れるブロンドの髪、彼女の青いスカートがはためく姿だけで既に美しく、絵になります。

 

 

この映画は西部劇の体裁を持ったメロドラマの側面もあるように思いました。

(「メロドラマ」と言う呼称は日本では何か低く見られがちな物を感じますが、ここでは取りあえず置いておきます)

全体が淡々としているのでメロの部分も淡々と描かれますが、

彼女と自然な流れで惹かれ合う訳ありな荷役人が西部劇だと言うのに全くマッチョ的な雰囲気が無いのが

このフラットな世界観に合っています。

上映後の渋谷哲也氏のトークで、時代的にエミリー(ニーナ・ホス)はコルセットを締めていた時代の人だけど、

このような状況下で身体的負担になる女性性の抑圧でもあるコルセットを道中で外しており、

コルセットからの解放の側面もある、と言う部分を聞いて、ひとりの女性の解放へのヒストリーでもあるのだなと思いました。

(実際にこの話は実話にインスピレーションを受けたようです)

そして盛り上がりそうなアクションの部分もあっさり流し、そして女は颯爽と馬に跨がって去っていきます。

全財産を叩いた彼女にはこの厳しい山道を引き返す余力も財力もありませんが、そこには悲壮感も何もありません。

 

だからこそ哀しみの中でハッとするような美しさがあります。

多くを語らない簡潔さにこそ美―――それは「自由」だと思いますが―――ある結末だと思いました。

 

トーマス・アルスラン監督作品、他の作品も観てみたい監督です。

 

 

 

 

 

 

2016年アテネフランセ文化センター「トーマス・アルスラン監督特集」にて鑑賞

http://www.athenee.net/culturalcenter/program/ar/arslan2016.html

 

※1:第7回京都国際ヒストリカ映画祭『黄金』レポート(2014.12)

http://www.historica-kyoto.com/historica_report/1378/

 

IMDb

http://www.imdb.com/title/tt2338846/

| 2016年映画鑑賞 | 19:08 | comments(0) | - |
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